医療被爆と脳腫瘍|nk-lab.jp

本研究について

「医療被曝と脳腫瘍 MOBI-Kids Studyにおける国際比較」は、基盤研究(C)(一般)科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金)として実施された疫学研究です。

(平成30年度~令和3年度 18K10112)

研究成果は、Kojimahara N, Yoshitake T, Ono K, Kai M, Bynes G, Schuz J, Cardis E, Kesminiene A. Computed tomography of the head and the risk of brain tumours during childhood and adolescence: results from a case-control study in Japan. J Radiol Prot. 2020 Aug 6. doi: 10.1088/1361-6498/abacff. PMID: 32759481.として公開されています。

<研究概要>

本研究は、MOBI-Kids 国際症例対照研究のために収集された日本のデータを用いて、診断用X線を半定量的に再評価して脳腫瘍のリスクとの関連を解析することを目的とした。MOBI-Kids 国際症例対照研究は、EUを中心とした14の国で2010年から2015年までの情報が収集された。国際研究では、10-24歳の脳腫瘍、対照群(虫垂炎入院患者)について携帯電話と脳腫瘍のリスクが検討されている。本研究では、MOBI-Kids国際研究で収集された日本データに加えて、適格基準を30歳までに広げた480名(脳腫瘍群120名、虫垂炎群360名)を対象とし、年齢、性をpost hocに1:3でマッチングさせた。診断放射線の検査歴は、本人または親に対する構造化されたインタビューにおいて、歯科を含むX腺、CT、MRIを撮影した年、年齢を調査した。Latency periodを2年に設定してNCICTで脳への累積吸収線量を推定した。解析は、条件つきのロジスティック回帰にて、全脳腫瘍、Gliomaのリスクについてオッズ比と95%信頼区間(CI)を計算した。 頭部を含むCT検査とX線検査からのばく露の合計は、ばく露0が最も多い左に偏った分布で(中央値0.02mGy、最大値217mGy)であった。脳への平均推定ばく露は32.2±13.0mGyで、症例群は平均して2.2回、対照群は1.8回の頭部CT検査を受けていた。性、年齢でマッチングした条件付きロジスティック回帰では、頭部CTからの脳へのばく露線量の全脳腫瘍のリスクのオッズ比は、0.93(95%CI:0.38-1.82)であった。さらに、両親の教育歴、神経精神疾患の診断歴で調整したがオッズ比に大きな変化はなかった。さらにアウトカムとして頭部CTを含む全身CTからの累積線量の全脳腫瘍と神経膠腫のリスクに関するオッズ比の有意な増加も認めなかった。